妙一尼御返事

〔C0・文永一〇年四月二六日・妙一尼〕/滝王丸、之れを遣使さる。昔国王は自身を以て床座と為し、千歳の間阿志仙に仕へ奉り、妙法蓮華経の五字を習ひ持つ。今の釈尊是れなり。今の施主妙一比丘尼は、貧道の身を扶けんとて小童に命じ、之れを使ひとして法華経の行者に仕へ奉る。彼れは国王、此れは卑賤。彼れは国に畏れなし、此れは勅勘の身。此れは末代の凡女、彼れは上代の聖人なり。志既に彼れに超過す。来果何ぞ斉等ならざらんや。斉等ならざらんや。弁殿は今年は鎌倉に住し、衆生を教化するか。恐々謹言。/卯月二十六日日蓮(花押)/さじき妙一尼御前/妙一比丘尼まいらせ候日蓮