観心本尊抄副状

〔C0・文永一〇年四月二六日・富木常忍・大田乗明・曾谷入道〕/帷一つ、墨三長、筆五巻給はり候ひ了んぬ。観心の法門少々之れを注し、大田殿・教信御房等に奉る。此の事日蓮当身の大事なり。之れを秘して、無二の志を見ば之れを開せらるべきか。此の書は難多く答少なし。未聞の事なれば人の耳目之れを驚動すべきか。設ひ他見に及ぶとも、三人四人座を並べて之れを読むこと勿れ。仏滅後二千二百二十余年、未だ此の書の心有らず。国難を顧みず五五百歳を期して之れを演説す。乞ひ願はくは一見を歴来たるの輩は、師弟共に霊山浄土に詣でて三仏の顔貌を拝見したてまつらん。恐々謹言。/文永十年〈太歳癸酉〉卯月二十六日日蓮(花押)/富木殿御返事