後五百歳合文

〔C6・文応元年〕/経の第七に云く〈薬王菩薩品、宿王華菩薩を対揚と為す〉「我が滅度の後、後の五百歳の中に、閻浮提に広宣流布して、断絶して悪魔・魔民・諸の天竜・夜叉・鳩槃荼等に其の便りを得しむること無けん」文。文句の一に云く「但当時大利益を獲るのみに非ず、後の五百歳遠く妙道に沾はん。故に流通分有るなり」文。記の一に云く「然るに五五百とは且く一往に従ふ、末法の初め冥利無きに不(あら)ず。且く大教の流行すべき時に拠る。故に五百と云ふ」文。義決の一に云く〈道邃撰〉「文旨を判ぜば、勧発品に云く、後の五百歳の濁悪世の中に於て、其れ是の経典を受持すること有らん者は、我当に守護すべし。大師は彼れに依るが故に後五百と云ふ。然れども毘尼母論の意に合せず。正しく大集に会へり。所以は何ん。安楽行品に云く末法の中に於て是の経を説かんと欲すと。又云く後の末世の時此の経を持たん者と。明らかに知んぬ、五百は末法の初めを指すことを。彼の大集経の五の五百の中、第四の多聞とは且く一往に従ふ、小乗の多聞なり。末法の初め大利無きに不(あら)ず。今は且く法華の大教流行すべき時に拠る。故に後五百歳遠沾妙道と云ふ」〈已上決文〉。守護章の上の下に云く「当今の人は機皆転変して都て小乗の機無し。正像稍過ぎ已りて末法太だ近きに有り。法華一乗の機今正しく是れ其の時なり。何を以て知ることを得ん。安楽行品に云く、末世法滅の時」。又云く「小乗権教の禅定堅固已に過ぎぬ」文。経の第五に云く〈安楽行品、文殊師利菩薩を対揚と為す〉「又文殊師利、如来の滅後末法の中に於て是の経を説かんと欲せば、応に安楽行に住すべし」〈口安楽行の処〉。又云く「文殊師利菩薩摩訶薩、後の末世の法滅せんと欲する時に於て」〈意安楽行の処〉。又云く「又文殊師利菩薩摩訶薩、後の末世の法滅せんと欲する時に於て、法華経を受持すること有らん者」〈誓願安楽行の処〉。経の第六に云く〈分別功徳品の滅後五品の中の第二品の下〉「悪世末法の時、能く是の経を持つ者は、則ち為れ已に上の如く、諸の供養を具足するなり」。経の第八に云く〈普賢菩薩勧発品の成就四法の普賢菩薩の誓願〉「如来の滅後に於て、閻浮提の内に広く流布せしめて断絶せざらしめん」云云。瑜伽論に云く〈弥勒菩薩、無著菩薩の請ひに趣きて云く〉「東方に小国有り。其の中に唯大乗の種姓のみ有り」文。法華翻経後記に云く「予、昔天竺国に在りし時、遍く五竺に遊びて大乗を尋討し、大師須利耶蘇摩に従ひて理味を餐稟し、慇懃に梵本を付属して言く、仏日西に入りて遺耀将に東北に及ばんとす。茲の典、東北の国に有縁なり。汝慎みて伝弘せよ」文。天竺別集に云く〈遵式の記。智礼の弟子、妙楽第八代の弟子〉「始めは西より伝ふ、猶月の生ずるがごとし。今復東より返る、猶日の昇るがごとし。素影円暉終に我が土に環回するなり」矣。〈此の言、唐土三河入道の渡せるを見て書けるなり〉。秀句の下に云く〈上中下三巻、伝教大師の御釈。嵯峨天皇の御宇弘仁十二年〈辛丑〉に之れを作る〉「爾の時に仏、復薬王菩薩摩訶薩に告げたまはく、我が所説の経典無量千万億にして、已に説き今説き当に説かん。而も其の中に於て此の法華経、最も為れ難信難解なり。薬王、此の経は是れ諸仏秘要の蔵なり。分布して妄りに人に授与すべからず。諸仏世尊の守護したまふ所なり。昔より已来未だ曾て顕説せず。而も此の経は如来の現在すら猶怨嫉多し。況や滅度の後をや〈已上経文〉。当に知るべし、已説の四時の経、今説の無量義経、当説の涅槃経は易信易解なり。随他意の故に。此の法華経は最も為れ難信難解なり。随自意の故に。随自意の説は随他意に勝る。但し無量義経の随他意とは未合の一辺を指す。余部の随他意に同じからざるなり。代を語れば則ち像の終り末の初め、地を尋ぬれば唐の東、羯の西、人を原(たず)ぬれば則ち五濁の生、闘諍の時なり。経に云く、猶多怨嫉況滅度後と。此の言良に以(ゆえ)有るなり」文。一乗要決の中に云く〈恵心僧都の記、上中下三巻〉「日本一州円機純一にして、朝野遠近同じく一乗に帰し、緇素貴賤悉く成仏を期す。唯一師等ありて独り信受せず、我未だこれを識らず、権とや為ん、実とや為ん。若し是れ実ならば以て哀傷すべし。世尊の言の如くんば、当来世の悪人は、仏説の一乗を聞いて惑迷して信受せず、法を破して悪道に堕せんと。若し是れ権ならば以て随喜すべし。浄名に言ふが如くんば、衆の魔事を覚知して而して其の行を示現す。善き方便智を以て意に随ひて皆能く現ず」文。広釈に云く〈安然作〉「粤(ここ)に弥勒菩薩説いて言く、東方に小国有り、其の中に唯大乗の種姓のみ有りと。我が日本国僉(みな)成仏を知る、豈に其の事に非ずや」文。/┌─一無目──一闡提──────諸経これを説く/涅槃経に三亀有り─┤二一目──二乗───────今経これを説く/└─三両目──菩薩┬一邪眼──今経これを説く/└二眇目──余経これを説く亀〈背冷〉衆生〈八寒地獄の如し〉生死大海の底に在り/〈腹熱〉〈八熱地獄の如し〉/浮木に二────┬─一凡木─一切木孔に二─┬─一凡木の孔─亀の腹冷えず/└─二聖木─赤栴檀└─二聖木の孔─亀の腹これを冷やす/仏法の浮木に二─┬─一凡木─四十余年の経/└─二聖木─今経涅槃経/┌─一大方広仏華厳経/┌─一小孔に四─┤二仏説阿含経/仏法の浮木の孔に二─┤│三大方等大集経/│└─四摩訶般若波羅蜜経/└─二大孔──────南無妙法蓮華経