南条殿御返事錯簡

〔C1・弘安元年〕/凡夫にてをはせし時、不妄語戒を持ちて、まなこをぬかれ、かわをはがれ、ししむらをやぶられ、血をすはれ、骨かれ、子を殺され、め(妻)をうばわれ、なんどせしかども、無量劫が間一度もそら事なくして其の功に依りて仏となり給ひて候が、無一不成仏と申して、南無妙法蓮華経と只一反申せる人、一人として仏にならざるはなしととかせ給ひて候。釈迦一仏の仰せなりとも疑ふべきにあらざるに、十方の仏の御前にてなにのへんぱ(偏頗)にか、そら事をばせさせ給ふべき。其の上釈迦仏と十方の仏、同時に舌を大梵天に(終)