齢六旬御書(阿仏房御返事)

〔C6・弘安四年六月三日・阿仏房〕/御状の旨委細承り候ひ畢んぬ。大覚世尊説いて曰く「生老病死生住異滅」等云云。既に生を受けて齢六旬に及ぶ。老又疑ひ無し。只残る所は病死の二句なるのみ。然るに正月より今月六月一日に至り、連々此の病息むこと無し。死ぬる事疑ひ無き者か。経に云く「生滅々已寂滅為楽」云云。今は毒身を棄て後に金身を受ければ豈に歎くべけんや。/六月三日日蓮花押/阿仏房