持妙尼御前御返事

〔C4・建治二年五月二四日・持妙尼(高橋殿後家尼)〕/八木(こめ)二俵送り給び候ひ了んぬ。度々の御志申し尽くし難く候。夫れ水は寒積れば氷と為る、雪は年累なりて水精と為る。悪積れば地獄となる、善積れば仏となる。女人は嫉妬かさなれば毒蛇となる。法華経供養の功徳かさならばあに竜女があとをつがざらん。山といひ、河といひ、馬といひ、下人といひ、かたがたかんなん(艱難)のところに、度々の御志申すばかりなし。御所労の人の臨終正念、霊山浄土疑ひなかるべし、疑ひなかるべし。/五月二十四日日蓮花押/御返事