四条金吾殿御返事2

〔C6・建治二年六月二七日・四条金吾〕/一切衆生、南無妙法蓮華経と唱ふるより外の遊楽なきなり。経に云く「衆生所遊楽」云云。此の文あに自受法楽にあらずや。衆生のうちに貴殿もれ給ふべきや。所とは一閻浮提なり。日本国は閻浮提の内なり。遊楽とは我等が色心依正ともに一念三千自受用身の仏にあらずや。法華経を持ち奉るより外に遊楽はなし。「現世安穏後生善処」とは是れなり。ただ世間の留難来たるとも、とりあへ給ふべからず。賢人聖人も此の事はのがれず。ただ女房と酒うちのみて、南無妙法蓮華経ととなえ給へ。苦をば苦とさとり、楽をば楽とひらき、苦楽ともに思ひ合はせて、南無妙法蓮華経とうちとなへゐさせ給へ。これあに自受法楽にあらずや。いよいよ強盛の信力をいだし給へ。恐々謹言。/建治二年〈丙子〉六月二十七日日蓮花押/四条金吾殿御返事