芋一駄御書

〔C0・弘安元年八月一四日〕/いも一駄・はじかみ五十ぱ(把)をくりたびて候。このみのぶのやまと申し候は、にし(西)はしらねのたけ(岳)、つねにゆき(雪)をみる。ひんがし(東)にはてんしのたけ、つねにひ(日)をみる。きた(北)はみのぶのたけ、みなみ(南)はたかとりのたけ、四山のあひはこ(箱)のそこのごとし。いぬゐ(戌亥)のすみよりかは(河)ながれて、たつみ(辰巳)のすみにむかう。かかるいみじきところ、みね(峰)にはせび(蝉)のこへ、たに(谷)にはさる(猿)のさけび、木はあしのごとし、くさ(草)はあめににたり。しかれどもかかるいも(芋)はみへ候はず。はじかみはをひず。いし(石)ににて少しまもりやわらかなり。くさ(草)ににてくさよりもあぢあり。法華経に申しあげ候ひぬれば、御心ざしはさだめて釈迦仏しろしめしぬらん。恐々謹言。/八月十四日日蓮(花押)/御返事