妙心尼御前御返事

〔C4・建治元年八月二五日・妙心尼(高橋六郎入道妻)〕/すずの御志送り給び候ひ了んぬ。をさなき人の御ために御まぼりさづけまいらせ候。この御まぼりは、法華経のうちのかんじん、一切経のげんもくにて候。たとへば、天には日月、地には大王、人には心、たからの中には如意宝珠のたま、いえにははしらのやうなる事にて候。このまんだらを身にたもちぬれば、王を武士のまぼるがごとく、子ををやのあいするがごとく、いをの水をたのむがごとく、草木のあめをねがうがごとく、とりの木をたのむがごとく、一切の仏神等のあつまりまぼり、昼夜にかげのごとくまぼらせ給ふ法にて候。よくよく御信用あるべし。あなかしこあなかしこ。恐々謹言。/八月二十五日日蓮花押/妙心尼御前御返事