土木殿御返事2

〔C0・文永八年九月一五日・富木常忍〕/上のせめさせ給ふにこそ法華経を信じたる色もあらわれ候へ。月はかけてみち、しを(潮)はひてみつ事疑ひなし。此れも罰あり必ず徳あるべし。なにしにかなげかん。/此の十二日酉の時御勘気。武蔵守殿御あづかりにて、十三日丑の時にかまくらをいでて、佐土の国へながされ候が、たうじはほんま(本間)のえち(依智)と申すところに、えちの六郎左衛門尉殿の代官右馬太郎と申す者あづかりて候が、いま四五日はあるべげに候。御歎きはさる事に候へども、これには一定と本よりごして候へばなげかず候。いままで頸の切れぬこそ本意なく候へ。法華経の御ゆへに過去に頸をうしなひたらば、かかる少身のみ(身)にて候べきか。又数数見擯出ととかれて、度々失にあたりて重罪をけしてこそ仏にもなり候はんずれば、我と苦行をいたす事は心ゆへなり。/九月十五日日蓮(花押)/土木殿御返事/御返事日蓮