宿屋入道再御状

〔C1・文永五年九月・宿屋左衛門入道〕/去ぬる八月の比(ころ)、愚札を進らせしむるの後、今月に至るも是非に付け返報を給はらず、欝念散じ難し。怱々の故に想亡せしむるか。軽略せらるるの故に□一行を慳むか。本文に云く「師子は少兎を蔑らず、大象を畏れず」等云云。若し又万一他国の兵、此の国を襲う□出来せば、知りて奏せざるの失(とが)、偏に貴辺に懸るべし。仏法を学ぶの法は身命を捨て国恩を報ぜんが為なり。全く自身の為に非ず。本文に云く「雨を見て竜を知り蓮を見て池を知る」等云云。災難急を見るの故度々之れを驚かす。用ゐざるに而も之れを諫む。強