安国論副状

〔C3・文永五年〕/未だ見参に入らずと雖も、事に触れ書を奉るは常の習ひに候か。抑正嘉元年〈太歳丁巳〉八月二十三日戌亥の刻の大地日蓮諸経を引きて之れを勘ふるに、念仏宗禅宗等とを御帰依有るの故に、日本国中の守護の諸大善神恚りに依りて起こす所の災なり。若し御対治無くんば他国の為に此の国を破らるべき悪瑞の由、勘文一通之れを撰し立正安国論と号し、正元二年〈太歳庚申〉七月十六日宿屋入道に付けて、故最明寺入道殿に之れを進覧せしむ。