内記左近入道殿御返事

〔C0・弘安五年一月一四日・内記左近入道〕/追申。御器の事は越後公御房申し候べし。御心ざしのふかき由、内房へ申させ給ひ候へ。/春の始めの御悦び、自他申し籠め候ひ了んぬ。抑去年の来臨は曇華の如し。将又夢か幻か。疑ひいまだ晴れず候処に、今年の始め深山の栖、雪中の室え多国を経ての御使ひ、山路をふみわけられて候にこそ、去年の事はまことなりけるや、まことなりけるやとをどろき覚え候へ。他行の子細、越後公御房の御ふみに申し候か。恐々謹言。/正月十四日日蓮(花押)/内記左近入道殿御返事