窪尼御前御返事

〔C4・弘安三年六月二七日・窪尼(高橋殿後家尼)〕/仏の御弟子の中にあなりち(阿那律)と申せし人は、こくぼん(斛飯)王の御子、いゑにたからをみてておはしき。のちに仏の御でし(弟子)となりては、天眼第一のあなりちとて、三千大千世界を御覧ありし人、法華経の座にては普明如来とならせ給ふ。そのさき(前)のよ(世)の事をたづぬれば、ひえ(稗)のはん(飯)一を辟支仏と申す仏の弟子にくやうせしゆへなり。いまの比丘尼は、あわ(粟)のわさごめ(早稲米)山中にをくりて法華経にくやうしまいらせ給ふ。いかでか仏にならせ給はざるべき。恐々謹言。/六月二十七日日蓮花押/くぼの尼御前御返事