妙一尼御前御返事

〔C6・弘安三年五月一八日・妙一尼〕/夫れ信心と申すは別にはこれなく候。妻のをとこ(夫)をおしむが如く、をとこの妻に命をすつるが如く、親の子をすてざるが如く、子の母にはなれざるが如くに、法華経・釈迦・多宝・十方の諸仏菩薩・諸天善神等に信を入れ奉りて、南無妙法蓮華経と唱へたてまつるを信心とは申し候なり。しかのみならず「正直捨方便不受余経一偈」の経文を、女のかがみ(鏡)をすてざるが如く、男の刀をさすが如く、すこしもすつる心なく案じ給ふべく候。あなかしこあなかしこ。/五月十八日日蓮花押/妙一尼御前御返事